高齢化社会が進む中、「親の認知症」と「財産管理」についてお悩みの方が急増しています。先日、70代のご両親を持つ50代の方が当事務所に相談に来られました。「親が認知症になったらどうすればいいのか」「大切な財産を守るにはどうしたらいいのか」という不安を抱えていらっしゃいました。

このような悩みは決して珍しいものではありません。認知症の症状が進むと、ご本人による適切な判断が難しくなり、財産管理に支障をきたすことがあります。また、悪質な詐欺や不当な契約などのリスクも高まります。

そこで有効なのが「任意後見制度」です。この制度を活用することで、ご本人の意思を尊重しながら、将来の財産管理について事前に備えることができます。当事務所では、このようなケースに対して、ご家族の状況に合わせた具体的な提案を行い、安心できる対策をご提案しています。

今回の記事では、実際の相談事例をもとに、任意後見制度の具体的な活用方法や準備のタイミング、さらには実例を交えながら、親の財産を守るための実践的な方法をご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、大切なご家族の財産と未来を守るための参考にしていただければ幸いです。

1. 【親の認知症に備える】任意後見制度を活用した財産保全の具体的方法

親の認知症発症は多くの家族が直面する問題です。認知症になると判断能力が低下し、財産管理が困難になるため、事前の対策が不可欠です。任意後見制度はそんな親の財産を守るための強力な法的手段です。この制度を利用すれば、親が認知症になった後も、あらかじめ指定した人(任意後見人)が親の意思を尊重しながら財産管理をすることができます。

まず任意後見制度の具体的な手続きを解説します。親が判断能力を有している間に、公証役場で「任意後見契約」を結びます。この契約書には、誰を任意後見人にするか、どのような権限を与えるかなどを明記します。契約は即時発効せず、親の判断能力が低下した時点で家庭裁判所に申立てを行い、「任意後見監督人」が選任されてから効力が生じます。

任意後見人には法律の専門家である弁護士や司法書士を選ぶことも、信頼できる家族を選ぶこともできます。東京家庭裁判所のデータによれば、任意後見人に選ばれるのは子どもが約40%、配偶者が約20%、専門職が約30%となっています。親の資産状況や家族関係に応じた適切な人選が重要です。

財産保全の具体的方法としては、不動産や預貯金などの管理方法を契約書に詳細に記載しておくことが大切です。例えば「自宅は売却せず、入院・介護施設入所の資金として500万円を確保する」といった具体的な指示を記しておけば、親の意思に沿った財産管理が可能になります。

また、日常的な金銭管理として、みずほ銀行や三菱UFJ銀行などでは「代理人カード」の発行サービスがあり、親の口座から必要な支払いができるようになります。ただし、こうした代理権は親の判断能力が低下すると使えなくなるため、任意後見制度と組み合わせることが重要です。

親が認知症になってからでは遅い場合もあります。法律の専門家に相談しながら、早めに任意後見制度の利用を検討することで、親の財産と尊厳を守ることができるでしょう。

2. 【専門家が教える】親の財産を守る!認知症になる前にすべき任意後見制度の準備

親が認知症になった場合、財産管理はどうなるのでしょうか?何の対策もしていないと、銀行口座が凍結されたり、不動産の売却ができなくなったりと、様々なトラブルが発生します。そこで注目したいのが「任意後見制度」です。この制度は、認知症になる前に、将来の財産管理を信頼できる人に託すための法的な仕組みです。

任意後見制度を利用するには、本人が判断能力を持っている間に「任意後見契約」を公正証書で結ぶことが必要です。この契約では、将来認知症などで判断能力が低下した際に、誰にどのような財産管理をお願いするかを明確に決めておきます。

実際に準備するステップとしては、まず親と一緒に公証役場に行き、公証人の面前で契約を結びます。費用は公正証書作成料として11,000円程度と、登記費用が別途必要となります。東京司法書士会や日本司法書士会連合会では、任意後見制度についての無料相談会も定期的に開催しています。

任意後見人には、親族を選ぶことも、弁護士や司法書士などの専門家を選ぶこともできます。親族を選ぶ場合は信頼関係が重要で、専門家を選ぶ場合は財産管理の専門知識を活かせるメリットがあります。

特に注意したいのは、任意後見契約は結んだだけでは発効しないという点です。実際に親の判断能力が低下した時点で、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てることで初めて効力が生じます。この手続きには約2〜3ヶ月かかるため、早めの準備が肝心です。

また、認知症の症状が出始めてからでは契約ができなくなるリスクがあります。物忘れが増えてきた、同じことを何度も話すといった初期症状に気づいたら、すぐに準備を始めることをおすすめします。

任意後見制度と似た制度に「成年後見制度」がありますが、大きな違いは本人の意思をどこまで反映できるかという点です。任意後見制度は本人が選んだ後見人が本人の希望通りに財産管理をする一方、成年後見制度は家庭裁判所が後見人を選任するため、必ずしも本人の希望通りにならないことがあります。

親の財産を守り、尊厳のある生活を支えるためにも、判断能力があるうちに任意後見制度の準備を始めることが、最も効果的な認知症対策と言えるでしょう。

3. 【実例で解説】親の意思を尊重しながら財産を守る任意後見制度の活用法

親の認知症に備えて任意後見制度を活用する具体例を見ていきましょう。Aさん(75歳)のケースでは、元気なうちに長男Bさんと司法書士Cさんを任意後見人に指定しました。Aさんは「自宅は絶対に手放したくない」「趣味の旅行を続けたい」という希望を契約書に明記。認知症発症後も、この意思が尊重され、Bさんが日常の金銭管理を、Cさんが不動産や高額資産の管理を担当する体制を整えました。

重要なのは、親の「したいこと」と「守りたい財産」を明確にすることです。実際、東京都在住のDさんは母親との任意後見契約で「月10万円までは好きに使える」「自宅マンションは売却せず住み続ける」などの条件を設定。認知症進行後も母親の意思を反映した生活が継続できました。

専門家との連携も成功の鍵です。司法書士法人みらいでは、本人・家族・専門家による定期的な面談を設け、状況変化に応じた柔軟な対応を実現しています。また、公正証書作成時に、財産目録を詳細に作成しておくことで、後々のトラブルを防止できます。

親族間の不和を防ぐためには、任意後見契約の内容を家族で共有しておくことが重要です。実例として、複数の子どもがいる家庭では、主たる後見人と監督者を分けて相互チェック体制を構築するケースも増えています。「親の意思」と「公平性」のバランスを取ることが、円滑な財産管理につながります。

任意後見制度の活用で注意したいのは、契約内容の定期的な見直しです。横浜市のEさん家族は、3年ごとに家族会議を開き、親の希望や健康状態、資産状況を確認。必要に応じて契約内容を更新することで、常に最適な支援体制を維持しています。

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保坂 一成
保坂 一成
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