当事務所の代表が「結婚契約書」でテレビに出演
テレビ東京特番「発見!ニッポン予想外家族」
( 平成24年7月29日放映 )
結婚契約書の公正証書とは
結婚経験がある方はお判りでしょうが、夫婦生活は決して生易しいものではありません。実際に結婚して共同生活を始めると、結婚前には考えなくても済んだ数々の問題に直面することがあります。
収入・家計のこと、家事の分担のこと、子供のこと(欲しいか否か、教育方法)、親との同居・介護のこと、友達や親族との付き合いのこと、お互いのプライバシー(趣味や電話・メール)に関すること、配偶者の浮気・暴力等々です。
これらの諸問題については、もちろん現実の生活の中で生じたときにその都度話し合う必要がありますが、問題が起きてから初めて話し合うのと、あらかじめ問題を想定して一定の約束を決めておくのと、どちらが解決の近道でしょうか。明らかに後者だと思います。
最近、テレビや新聞などのマスコミでも取り上げられるようになりました「結婚契約書」という書面があるのをご存知でしょうか?
「結婚契約書」は、結婚生活において生じるであろう諸問題について、その夫婦にとって大事だと思われる事柄に関して「事前に約束を取り交わしておき、あらかじめ解決の糸口を見つけやすくするもの」です。
「結婚」は本来、希望に満ち溢れるものです。結婚をしたら、夫婦として「行きたいところ」や「やりたいこと」など、楽しみがたくさんあります。
しかし、その一方で夫婦生活は結婚前には深く考えていなかった、多種多様な問題に直面してしまうことも。
特に、収入や家事の分担・介護・お互いのプライバシーに関わることは、夫婦といえどやはり事前に約束ごとを決めておきたいですよね。
これらの約束事をしっかり決めておき、夫婦で共有しておけば問題に直面した時に解決への近道となります。
その結婚契約書を公正証書とすることによって、公文書としての信頼が生まれ、執行証書としての機能も加えることができます。
また、手間はかかってしまうものの、契約内容の修正や撤回変更も可能。より良い夫婦関係を続けていくためには、ぜひ活用したいもののひとつです。
そこで、法的効力のある「結婚契約書」について詳しく解説していきます。
結婚「契約書」なので合理的
正直なところ、まだ日本では「結婚契約書」というものは一般的ではないかもしれません。
もしかすると、なかには気難しいイメージや、抵抗感を抱く人もいると思いますが、大事な決め事は口約束ではなく、文書にしておくことは非常に重要です。
そもそも、結婚や入籍も法的な見方をすると契約行為。そこからもう少し踏み込んで契約書という正式な文書にしておくと、万が一の時に安心ですよね。
また、結婚契約書に記載する内容は、お金のことから浮気に関することまで様々です。
結婚契約書の公正証書に記載する事項は?
記載する内容は基本的に「契約自由の原則」という法律の原則に基づいており、夫婦それぞれに合わせた自由な内容で作成できます。
もちろん、最低限のルールはあるのですが「世の中の秩序を乱さない」「犯罪をしない」「不法なことを条件にしない」といった大前提のようなもの。
この前提を守ればかなり自由に記載可能で、その内容としては以下のようなものがあります。
- 財産や収入について
- 生活全般について
- 子どもについて
- 約束違反について
- 離婚について
他にも「無断で借金をしない」「記念日は一緒に過ごす」など、それぞれの夫婦に合わせて多種多様な内容になっています。
その中でも、特に多くの人が記載しているものとして「お金に関すること」「不倫や浮気に関すること」ついて少し掘り下げて具体的に解説していきます。
お金に関すること
お金に関することは普段話題に出しにくいもの。しかし、お金のことは結婚生活において、重要な約束事のひとつです。
結婚契約書の作成を通じて、改めてお金の話をするといった方も多数いらっしゃいます。具体的には「家計の管理をどちらがするか」「毎月の給与明細をしっかり開示するか」といった部分を決めている方が多いようです。
とはいえ、このお金に関する話は夫婦でも考え方が異なりやすいもの。
ちょっとした意見の違いを明確にしないままにしておくと、夫婦のトラブルの原因にもつながってしまうケースもあるでしょう。
また、普段とこれからのお金に加えて、結婚前から保有する財産についても明確にしておかねばいけません。
結婚前から持っている財産は「特有財産」と言われ、夫婦の共有財産とは区別されるものなのです。
これは民法上で定められたものであり、結婚したからといって共通のものになるわけではありません。
特に、ある程度の特有財産を持っている場合には、事前にその取り扱いを確認しておくとお互いに相違がないでしょう。そういった意味でも、結婚契約書を作成するメリットは大きいと考えられます。
不倫や浮気に関すること
この不倫や浮気に関することは、結婚契約書を作成する方の95%以上が盛り込んでいる内容です。
そう考えると、ほとんどの人がパートナーの不倫や浮気に対して不安を持っていることに。特に、そのパートナーに浮気の疑惑や、不倫を原因とする離婚歴があった場合はなおさらでしょう。
「結婚前の約束を本当に守ってくれるのか」「本当に浮気をしないか」「不倫があった場合の慰謝料はどうなる」
と考えてしまっている方も多いようです。
実際に契約書に内容を盛り込む時には、以下のようなものを記載するといいでしょう。
- 異性と2人きりで密会をしない
- 異性と隠れて連絡を取ってはならない
上記のようなそもそもの行動を抑止する内容に加え、実際に不倫や浮気をした場合の内容も記載しておきます。
「一方の申し出によって離婚協議を開始できる」と明記しておくと不倫や浮気に対する抑止効果にもなります。
加えて、離婚協議を行う場合は、以下のような要素が重要になってきます。
- 慰謝料の金額
- 子どもの親権の決定
- 月々の養育費
ただ、現段階でこのあたりの慰謝料や養育費に関して、具体的な金額を記載するのは難しいかもしれません。
と言っても、この段階で具体的な金額を記載する必要はないので、支払い自体の義務のみ記載しておくと良さそうです。
たとえば「精神的苦痛に相当する慰謝料を支払う」「子どもが満20歳に達する月までは養育費を支払う」といった具合です。
このような支払いの義務をはっきりとしておかないと、いざという時にトラブルになるケースも多くなってしまいます。
ここまで読んでいただいて「結婚契約書に離婚や不倫について記載するのは嫌だな」と思った方も多いと思います。しかしそこは、実際に不倫や浮気を行う前提ではなく「抑止効果を持たせるため」と割り切りたいものです。
結婚の前提である「お互いに気持ちよく長く一緒に暮らすため」には、必要な記載かと思います。
結婚契約書の公正証書の作成に必要になる書類は?
ではここからは結婚契約書の公正証書の作成に必要になる書類を説明します。
結婚契約書自体は個人で作ることも可能ですが、公文書としての信頼をプラスするには公証人への一定の手続きが必要です。
ここでは、以下の3つのパターンについてお伝えします。
- 夫と妻に必要なもの
- 夫や妻が代理人に依頼した場合
- 保証人をつけた場合
それぞれのケースで作成に必要なものを解説します。
夫と妻に必要なもの
夫と妻に必要なものは以下のいずれかです。
- 運転免許証やパスポート+認印
- 印鑑証明書+実印
運転免許証やパスポートの代わりに、写真入りの住基カードでも手続き可能です。各々、用意しやすいものにしましょう。
夫や妻が代理人に依頼した場合
夫や妻が代理人に依頼した場合は、以下のものが必要です。
- 代理人との契約内容が記してあり委任者の実印が押してある委任状+印鑑証明書
- 代理人自身の運転免許証やパスポートなど+認印または印鑑証明書+実印
上記のものが必要となり、契約書以外に委任状の作成をする必要があります。
保証人をつけた場合
保証人を付けた場合は以下のものが必要です。
- 保証人の運転免許証やパスポートなど+認印
- 保証人の印鑑証明書+実印
代理人の場合と違い、保証人は上記のもの全てが必要ではなく、いずれかがあれば手続きが可能です。
これらの他にも、夫婦間で取り決めた約束事を書いたメモといった内容が分かるものも公正証書作成の資料になります。
さらに、公証人に支払う手数料も必要になりますが、こちらは定めるケースによって違いがあるので別途問い合わせが必要です。
結婚契約書の公正証書の作成の注意点
先ほどもお伝えしましたが、結婚契約書は決して相手を縛り付けるものではありません。
結婚契約書の作成は、これからの結婚生活をより良くするためのきっかけのひとつなのです。
つまり、大前提として、自分の意見だけではなく、相手の意見も尊重して話し合いながら結婚契約書を作成する必要があります。
その上で、結婚契約書の公正証書を作成する時の注意点として、以下の項目を説明していきます。
夫婦間の契約
記載内容の変更や追加
違反時について
ひとつずつ解説していきます。
夫婦間の契約
夫婦間の契約としての注意点は、夫婦間で交わした契約は原則として婚姻中であれば取り消すことができること。民法754条によれば「いつでも・一方的に」取り消し可能なので、その点は注意が必要です。
ただし、合意契約公正証書を作成する際に「民法の夫婦間契約の取消権は使わない」といった旨の除外規定を入れておくと、取り消しは行えなくなります。
記載内容の変更や追加
結婚に限定せずとも、人生では想定外のことがたくさん起こります。
そういった想定外の出来事に対しても、結婚契約書では備えておく必要があります。
具体的には「契約内容の変更や追加をできる」といった記載をしておきましょう。
加えて、◯年ごとに見直すといった記載をし、定期的な更新を行うことも可能です。
違反時について
契約の違反をした時についての記載をしておくことも大切です。先ほどお伝えした慰謝料の記載がこれに当てはまります。
それに加えて、強制執行受諾文言を入れておくことも必要です。
「支払いをしなかった場合には強制執行を受けても異存ありません」といった文言を入れておけば、裁判をしなくても差し押さえが可能になります。
この文言がない場合、公正証書を作成しても強制執行ができなくなってしまうのです。
ただし、ここで注意しておきたいのは、その金額や約束事のボリューム細い約束事が多かったり現実的ではない慰謝料の金額だったりしてしまうこと。
そうなると、公正証書そのものがケンカの原因となってしまうケースもあります。繰り返しにはなりますが、結婚契約書やその公正証書は円満な夫婦生活のために作るもの。
違反時の条件の記載においてもじっくりと夫婦で話し合って決定しましょう。