近年、婚姻届を提出せずに一緒に暮らす「事実婚」を選択するカップルが増えています。「籍を入れなくても問題ない」と考えている方も多いかもしれませんが、実際には様々な法的リスクが潜んでいることをご存知でしょうか?
事実婚には法律婚とは異なる制度上の制約があり、財産分与や相続、子どもの認知など、将来的に大きな問題につながる可能性があります。万が一のとき、「知らなかった」では済まされない状況に直面することも少なくありません。
横浜を拠点に活動する行政書士事務所として、多くの事実婚カップルの相談に応じてきた経験から、よくある法的ミスとその対策についてお伝えします。この記事では、事実婚カップルが知っておくべき法的リスク、財産分与の問題、必要な書類の準備、そして子どもに関わる重要な法的問題について詳しく解説します。
事実婚を選択する自由は尊重されるべきですが、その選択に伴うリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが大切です。この記事が皆様の将来を守るための一助となれば幸いです。
コンテンツ
1. 事実婚の落とし穴!知らないと後悔する法的リスクと対策法
事実婚を選ぶカップルが増えていますが、法的保護の面では多くの落とし穴が存在します。法律上の婚姻関係にない事実婚カップルは、知らぬ間に重大なリスクを抱えていることがほとんどです。特に深刻なのが相続権の問題。法律婚なら当然認められる配偶者の相続権が、事実婚ではまったく保障されません。つまり、パートナーが亡くなった場合、どれだけ長い間一緒に暮らしていても、法的には「他人」として扱われてしまうのです。
また、医療現場での決定権も大きな問題です。パートナーが意識不明の重体に陥った場合、事実婚のパートナーには法的な同意権がありません。医師は血縁関係のある家族の意見を優先せざるを得ず、長年連れ添ったパートナーの意向が反映されないケースが少なくありません。
さらに財産分与についても注意が必要です。離別時の財産分与は法律婚には認められていますが、事実婚では原則として認められません。共有名義にしていない不動産や、片方の名義で貯めた預金は、関係終了時に分けることが難しいのです。
これらのリスクに対処するには、公正証書による遺言書の作成が効果的です。また、共同生活のルールを定めた「パートナーシップ契約書」を公正証書で作成しておくことも一案です。不動産や高額資産は共有名義にするなど、将来のトラブルを回避する対策を講じておくことが重要です。
地方自治体によっては「パートナーシップ制度」を設けているところもあり、これを利用することで一定の便宜が図られます。しかし、これは法的効力を持つものではなく、あくまで補完的な手段として捉えるべきでしょう。
事実婚の法的リスクを把握し、適切な対策を取ることで、将来の不安を軽減することができます。専門家に相談しながら、二人の関係に合った法的対策を検討することをお勧めします。
2. 「籍を入れなくても大丈夫」は嘘?事実婚カップルが直面する現実的問題
2. 「籍を入れなくても大丈夫」は嘘?事実婚カップルが直面する現実的問題
事実婚をお考えのカップルの間で「籍を入れなくても法律婚と同じ」という認識が広がっていますが、実際にはさまざまな場面で法的な壁にぶつかることになります。事実婚と法律婚では権利や義務に大きな違いがあり、その差を知らないまま生活を続けると、後々深刻なトラブルに発展する可能性があります。
まず最も大きな問題は相続権の欠如です。事実婚のパートナーには法定相続権がないため、一方が亡くなった場合、遺言書がなければ財産を相続することができません。たとえ長年連れ添った相手でも、法的には「他人」として扱われるのです。具体例として、共同で住宅ローンを組み、生活をしていたカップルのケースがあります。パートナーが急逝した際、残されたパートナーに遺言がなかったため、住んでいた家を親族に相続されてしまい、住む場所を失うことになりました。
次に医療決定権の問題があります。パートナーが意識不明の重体になった場合、医療同意や治療方針の決定権は血縁関係にある家族に与えられます。事実婚のパートナーには法的な発言権がなく、長年の関係性があっても病院では「家族」として認められないケースが多発しています。緊急時の面会さえ制限されることもあります。
さらに年金や社会保障の問題も見過ごせません。配偶者に支給される遺族年金は事実婚のパートナーには原則として支給されません。また、健康保険の扶養にも入れないため、医療費の負担が法律婚の夫婦に比べて大きくなる傾向があります。
税制面でも不利な点があります。法律婚であれば配偶者控除や配偶者特別控除、相続税の配偶者控除などの恩恵を受けられますが、事実婚では適用されません。結果として、同じ生活状況でも税負担が重くなることが一般的です。
子どもがいる場合はさらに複雑です。事実婚の場合、母親との間には自動的に法的親子関係が発生しますが、父親との関係は認知手続きが必要になります。認知しなければ、子どもは父親の戸籍に入ることができず、相続権も発生しません。
こうした問題に対処するためには、公正証書による遺言の作成、任意後見契約の締結、共有財産の明確化など、法的手続きを事前に行っておくことが重要です。また、パートナーシップ制度を導入している自治体に住むことで、一部の行政サービスでは夫婦と同様の扱いを受けられる場合もあります。
事実婚を選択する自由は尊重されるべきですが、その選択によって生じるリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが、将来のトラブルを防ぐ鍵となります。事実婚を考えているカップルは、早い段階で行政書士や弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
3. 事実婚で財産分与はどうなる?専門家が解説する権利と対策
事実婚関係にあるカップルが直面する大きな誤解の一つが「財産分与」についてです。法律婚とは異なり、事実婚では民法上の財産分与請求権が自動的には発生しません。これは多くのカップルが見落としがちな重要な法的問題です。
事実婚関係が終了した場合、基本的には「自分の名義の財産は自分のもの」という原則が適用されます。つまり、住宅ローンや車、家財道具など、誰の名義で購入したかが重要となります。一方の収入で購入しても、名義が相手方になっていれば、その財産は法律上、相手のものとなってしまいます。
ただし、完全に保護されないわけではありません。共同生活中に協力して形成した財産については、「共有財産」としての請求や、「不当利得返還請求」「不法行為に基づく損害賠償請求」などの民法上の一般原則に基づく請求が可能な場合があります。
最高裁判所も、事実婚関係における財産形成への寄与を認める判例を示しており、特に長期間の事実婚関係では、実質的な財産分与に近い解決が図られるケースもあります。
事実婚カップルが財産トラブルを避けるための対策としては、以下が有効です:
1. 契約書の作成:共同で購入した財産については、出資割合や所有権の帰属を明確にする書面を作成する
2. 共有名義の活用:重要な財産は共有名義にし、出資割合を明確にしておく
3. 金銭の貸し借りは記録する:生活費や資産形成のための資金提供は記録を残す
4. 公正証書による合意:将来の別離に備え、財産分配についての合意を公正証書にしておく
特に注意すべきは住居の問題です。賃貸契約も所有権も一方の名義のみの場合、関係解消時に住む場所を失うリスクがあります。共同名義や居住権についての契約を検討することが重要です。
法的な保護が限定的である事実婚の財産関係については、事前の取り決めと証拠保全が鍵となります。関係が良好なうちに、将来起こりうるトラブルを想定した対策を講じておくことが、結果的に双方の権利を守ることにつながるのです。
4. 突然のトラブルに備えて!事実婚カップルが今すぐ準備すべき書類リスト
事実婚関係にあるカップルは、法的な保護が法律婚と比べて弱いため、突然のトラブルに備えた書類の準備が不可欠です。万が一の事態が発生した際に、お互いの権利を守るために、以下の書類を今すぐ準備しておきましょう。
まず必須なのが「同意書・合意書」です。日常生活の取り決めから財産の扱いまで、カップル間の合意事項を明文化しておくことで、後のトラブル防止になります。特に共同で購入した財産の帰属、家賃や生活費の分担方法などを明確にしておきましょう。
次に「任意後見契約書」です。パートナーが認知症など判断能力が低下した場合に、法的な保護者になれるよう事前に契約しておくことが重要です。法律婚でない場合、自動的に後見人になれる権利はないため、この書類がないと他人が後見人に選ばれる可能性があります。
「遺言書」も絶対に用意すべき書類です。法定相続人ではない事実婚パートナーは、遺言書がなければ遺産を相続できません。公正証書遺言が最も確実ですが、自筆証書遺言でも法的効力はあります。ただし形式要件を厳格に守る必要があります。
また「任意保険の受取人指定」も忘れてはなりません。生命保険などの受取人をパートナーに指定しておかないと、血縁関係のある法定相続人に保険金が支払われてしまいます。保険会社に受取人変更の手続きをしておきましょう。
医療に関する「医療同意書」と「医療委任状」も重要です。入院時の面会や治療方針の決定に関与できるよう、事前に医療機関に提出できる書類を準備しておくと安心です。法的効力に限界はありますが、医療現場での判断材料として尊重されることが多いです。
住宅ローンなどの「連帯保証人・連帯債務」の契約書も見直しが必要です。共同名義で契約している場合、一方に何かあったときの責任範囲を明確にしておくことが重要です。
これらの書類は専門家のアドバイスを受けながら作成するのが望ましいでしょう。日本行政書士会連合会や各地の行政書士会では、事実婚に関する相談窓口を設けています。法的な保護を最大限に確保するためにも、早めの準備をおすすめします。
5. 子どもの将来に影響も?事実婚家族が知っておくべき相続と認知の問題点
事実婚カップルの間に生まれた子どもに関する法的問題は、多くの方が見落としがちな重要ポイントです。法律上、婚姻関係にない両親から生まれた子どもは「非嫡出子」として扱われ、父親との親子関係を法的に確立するには「認知」という手続きが必要となります。
認知手続きを怠ると、子どもは父親の戸籍に入れず、法定相続人としての権利も制限されます。相続においては、認知されていない子どもは父親の財産を相続できないため、将来的に大きな不利益を被る可能性があります。
また、認知されていても法定相続分に差がある時代もありましたが、現在は嫡出子と非嫡出子の相続分は平等になっています。しかし、認知の手続き自体を行わなければ、そもそも相続権が発生しません。
認知の方法には、出生届の提出時に父親が認知する「胎児認知」や「任意認知」、父親が認知を拒否した場合に家庭裁判所で行う「強制認知」などがあります。特に胎児認知は、子どもが生まれる前に手続きができるため、出産後の煩雑な手続きを避けられるメリットがあります。
さらに看過できないのが、父親が突然亡くなった場合のリスクです。父親の死後の認知手続きは非常に複雑で、証拠の収集も困難になります。また、父方の祖父母との関係性も認知の有無で大きく変わることがあります。
事実婚カップルが子どもを持つ場合は、出生前または出生時に必ず認知手続きを行い、公正証書遺言を作成しておくことをお勧めします。子どもの将来を守るために、これらの法的手続きは決して先延ばしにすべきではありません。
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