「公正証書遺言」は、遺言者が公証人に伝えた遺言内容を、公証人が公正証書として作成する遺言です。証拠力が高く、かつ確実な遺言方法と断言できます。


一方、自分で作成する「自筆証書遺言」というものもあります。
一番簡単な方法で、費用もほとんどかかりません。
遺言者が (1)遺言書の全文 (2)日付 (3)氏名 を、全て自分で書いて印鑑を押します。自分で書くことを要件としているのは、その筆跡が遺言者のものであることを明らかにするためです。


そんな手軽に作れる自筆証書遺言ですが、デメリットがあります。
紛失(死後、遺言書が発見されない)・隠匿(自分に不利な内容の遺言書を隠してしまう人がいる)・変造(自分に不利な内容の遺言書を書き換えてしまう人がいる)のおそれがあり、また、遺言形式や内容の不備によっては「無効」となる可能性があるということです。


これらの事実が発覚するのは、原則遺言者の死後のことですので、全ては後の祭りということになります。
せっかく作成した遺言書もこれでは意味がありません。
ですので間違いなく、遺言書は「公正証書遺言」にするべきなのです。


さらに、遺言書の中で「遺言執行者」を選任しておきましょう。
遺言執行者とは、遺言書の内容を具体的に実現する人をいいます。遺言書に書かれている内容・趣旨にそって、相続人の代理人として相続財産を管理し、名義変更などの各種の手続を行います。

遺言書を書かなければならないケース

(1) 夫婦の間に子供がいない場合

この場合、遺言がないと妻(夫)以外の兄弟姉妹やおいめい等にも相続権が発生してしまいます。妻(夫)に全財産を相続させるには、遺言を残す必要があります。兄弟姉妹や甥姪等には遺留分請求権(相続分を主張する権利)がありませんので、遺言があれば妻(夫)に全財産を残すことができます。

(2) 息子の妻・娘の夫に財産を贈りたい場合

息子の妻・娘の夫には相続権がありません。不幸な話ですが、子供が親より先に亡くなってしまい、残された息子の妻に面倒を看てもらうということもよくあることです。
そんなとき、遺言で息子の妻のためにいくらかの遺産を残してあげたい、と思うのは当たり前の話ではないでしょうか。

(3) 夫婦の一方又は双方が再婚の場合

この場合には、関係者が感情的になってしまうおそれがあります。ですから、残された子供達が醜い争いに巻き込まれないようにするためにも、早い時期に、誰に、どのような割合で遺産を分けるかを決めておくべきでしょう。

(4) 内縁関係の場合

夫婦が内縁関係だとお互いに相続権がありません。ですので相手のために財産を残したいときは、必ず遺言をする必要があります。

(5) 相続人が全くいない場合

この場合、最終的には遺産は国のものとなります。お世話になった人や、団体等に寄付したい場合は、遺言を残しておくことが必要です。

公正証書遺言の作り方

公証人に対し遺言の内容を伝え、その内容を公証人が書面(公正証書遺言)にします。遺言者本人が病気などで公証役場へ出むけない場合は、公証人が自宅や病院に出張してくれます。

公正証書遺言の作成をする場合は、あらかじめ下記書類を用意しておきます。

  • 本人の印鑑登録証明書
  • 本人と相続人の名前が載っている戸籍謄本
  • 財産をもらう人が相続人以外の場合は、その住民票
  • 遺言の内容に土地・建物がある場合は、その登記簿謄本(又は登記済権利証)、納税通知書(又は評価証明書)
  • 不動産以外の財産は、それらを記載したメモ等