近年、パートナーシップの形は多様化し、法律婚だけでなく事実婚を選択するカップルも増えています。「籍を入れなくても実質的に夫婦として暮らしていれば同じでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、同じように見える二つの関係性には、法律上の扱いに大きな違いがあります。相続権、財産分与、緊急時の意思決定権、住宅ローン、年金受給額など、知らないうちに不利益を被っているケースも少なくありません。
当事務所には「事実婚を続けてきたが、パートナーが亡くなって財産が相続できなかった」「緊急手術の同意ができなかった」といった後悔の声が数多く寄せられています。
この記事では、横浜で行政書士として多くのカップルの相談に応じてきた経験から、事実婚と法律婚の決定的な違いを徹底解説します。将来のリスクを回避し、自分たちに合った関係性を選ぶための重要な情報をお届けします。
特に年金制度においては、選択次第で将来受け取れる金額に180万円もの差がつくケースもあり、知っておくべき知識は山ほどあります。あなたとパートナーの将来のために、ぜひ最後までお読みください。
コンテンツ
1. 事実婚カップル必見!知らないと損する法的権利と保障の違い
事実婚と法律婚では法的権利に大きな差があります。事実婚は住民票上別々のままで、婚姻届を提出しない関係を指します。近年選択する方が増えていますが、知っておくべき重要な権利の違いがあります。まず相続権について、法律婚なら配偶者は法定相続人として自動的に財産を相続できますが、事実婚のパートナーには相続権がありません。遺言書がなければ、どれだけ長く一緒に暮らしていても法的には「他人」扱いです。また医療同意権も大きな違いで、法律婚の配偶者は手術の同意や病状説明を受ける権利がありますが、事実婚パートナーにはそうした権利が認められないケースが多いです。さらに税制面でも、法律婚では配偶者控除や配偶者特別控除が適用されますが、事実婚では受けられません。社会保障においても、健康保険の扶養や年金の遺族給付など、法律婚では当然の権利が事実婚では制限されます。このような違いを理解した上で、公正証書や遺言書などで対策を講じることが大切です。
2. 【最新解説】事実婚と法律婚、相続で大きく変わる財産分与のルール
事実婚と法律婚では、パートナーが亡くなった後の財産分与において決定的な違いがあります。法律婚の場合、配偶者には法定相続権が自動的に発生し、配偶者は法定相続人として一定割合の遺産を取得する権利が保障されています。例えば、子どもがいる場合は配偶者が2分の1、子どもが2分の1を相続します。
一方、事実婚の場合、パートナーには法定相続権が一切認められていません。つまり、遺言書がなければパートナーは原則として財産を相続できないのです。これは多くのカップルが見落としがちな重要な点です。
財産を守るための対策として、事実婚カップルは遺言書の作成が必須と言えます。遺言書がない場合、どれだけ長く一緒に暮らしていても、法的には「他人」扱いとなり、財産は血縁関係のある法定相続人(子ども、親、兄弟姉妹など)に分配されます。
また、生命保険の受取人をパートナーに指定することも有効な方法です。生命保険金は遺産分割の対象外となるため、確実にパートナーへ財産を残すことができます。
法律婚では当然のように享受できる相続権ですが、事実婚では権利を守るための積極的な法的対策が不可欠です。事実婚を選択する際は、これらの相続における違いを十分理解し、専門家のアドバイスを受けながら必要な準備を整えることをお勧めします。
3. 病気・事故の時に差が出る!事実婚と法律婚の緊急時権限の違い
もしパートナーが急に入院するような事態になったとき、あなたはどのような権限を持っているでしょうか。事実婚と法律婚では、緊急時の対応に大きな違いがあります。
法律婚の場合、配偶者は「近親者」として自動的に認められるため、手術の同意や治療方針の決定に関与できます。医師からの病状説明を受ける権利も法的に保障されています。また、意識不明などの状態でパートナーが判断できない場合も、配偶者として医療同意権を行使できることが多いです。
一方、事実婚カップルの場合、法的には「他人」と見なされるケースがあります。パートナーの病状説明を受けるにも、血縁家族の許可が必要になることも。特に重篤な状態での手術同意などでは、事実婚パートナーではなく、血縁家族の意見が優先されてしまいます。
実際のケースでは、長年一緒に暮らしていた事実婚パートナーが病室への面会すら制限された例や、治療方針の決定から除外された事例が報告されています。
このリスクを軽減するためには、事実婚カップルは「任意後見契約」や「医療に関する委任状」などの法的書類を事前に準備しておくことが重要です。また、救急搬送時のための緊急連絡先指定や、病院での面会許可申請なども検討すべきでしょう。
突然の事態に備えて、事実婚カップルは法的な備えを怠らないことが、お互いを守るための最善の方法です。特に持病がある場合や高齢のカップルは、早めの対策をおすすめします。
4. マイホーム購入を考えるカップル必見!事実婚と法律婚での住宅ローンの審査基準
マイホーム購入を検討しているカップルにとって、住宅ローンの審査は大きな関門です。特に事実婚と法律婚では、金融機関の対応に違いがあることをご存知でしょうか。
まず法律婚の場合、夫婦での連帯債務や連帯保証が一般的で、双方の収入を合算して審査されるため、借入可能額が増える傾向にあります。住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)のフラット35も含め、ほとんどの金融機関が夫婦での申し込みに対応しています。
一方、事実婚カップルの場合は金融機関によって対応が大きく異なります。多くの地方銀行や信用金庫では、事実婚関係での連帯債務者としての申し込みを認めていないケースが多いのが現状です。ただし、メガバンクや一部のネット銀行では「パートナー」として申請可能な商品も増えてきています。
具体例を挙げると、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、住信SBIネット銀行などでは事実婚カップルでも連帯債務者として住宅ローンを組むことが可能です。ただし「同居している」「生計を共にしている」などの条件があり、それを証明する書類(同一住所の住民票など)の提出が求められるケースがほとんどです。
また、審査基準においても違いがあります。法律婚の場合、家族としての安定性が高いとみなされ、審査で有利になる傾向があります。事実婚では個人の信用力がより重視されるため、安定した収入や勤続年数、貯蓄額などがより厳しくチェックされることがあります。
住宅ローン控除についても注意が必要です。法律婚の場合は配偶者居住権が認められますが、事実婚では原則として適用されません。ただし、共有名義でローンを組む場合は、持分割合に応じて各自が控除を受けることは可能です。
マイホーム購入を考えている事実婚カップルは、事前に複数の金融機関に相談し、対応状況を確認することをおすすめします。近年は多様な家族形態に対応する金融商品も増えていますので、自分たちに合った選択肢を見つけることが大切です。
5. 将来の年金はどうなる?事実婚と法律婚で180万円も差がつくケースも
年金は老後の生活を支える重要な柱ですが、事実婚と法律婚では受け取れる金額に大きな差が生じることをご存知でしょうか。実際に、条件によっては180万円もの差額が発生するケースがあります。
まず基本的な違いとして、法律婚の場合は「第3号被保険者制度」が適用されます。これは収入の少ない配偶者(多くの場合は専業主婦・主夫)が国民年金保険料を納めなくても、働いている配偶者の厚生年金に加入していることで年金受給権が発生する制度です。一方、事実婚ではこの制度が適用されないため、それぞれが個別に国民年金保険料を納める必要があります。
具体的な差額を見てみましょう。例えば、30年間専業主婦として過ごした場合、法律婚なら保険料負担なしで基礎年金(現在約78万円/年)を受け取れますが、事実婚の場合は保険料を納めていなければ年金額が減額されます。未納期間が長ければ長いほど、その差は拡大し、最大で年間60万円程度の差になることも。これが3年間続けば180万円の差額になります。
また、「遺族年金」においても大きな違いがあります。法律婚の配偶者は、パートナーが亡くなった場合に遺族厚生年金を受給できますが、事実婚のパートナーにはこの権利がありません。特に、高収入のパートナーが亡くなった場合、法律婚と事実婚での生活保障の差は深刻なものとなります。
さらに注目すべきは「加給年金」です。厚生年金加入者が老齢厚生年金を受け取る際、扶養している配偶者がいれば加算される制度ですが、これも法律婚限定の特典です。年間約39万円の加算が受けられないということは、10年で390万円もの差額になります。
年金制度は複雑で、制度改正も頻繁に行われるため、最新情報を確認することが重要です。事実婚を選択する場合は、将来の年金受給に備えて、個人型確定拠出年金(iDeCo)や民間の個人年金保険などで補完することをお勧めします。法律婚と事実婚、それぞれのライフスタイルに合わせた老後の備えを考えましょう。
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